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内科外来今昔物語(H20.12月)
むかしむかしのお話です。木枯らしが吹き始める頃になると風邪の患者さんが増えてきます。多くの方は一回の診察と投薬で回復するんですが中にはかなり長く通院する人もいました。そんな人は大体、ある程度以上の年齢の方でして糖尿病があったり、昔結核にかかってその跡が残っていたり、大酒飲みで肝臓が悪かったり、ニコチン中毒でタバコがやめられなかったり何らかの“わけあり”の人たちだったんですけどSさんはそんな人々とは全く違う印象でした。年齢は30歳で独身キャリアウーマン、仕事の内容は良く知りませんが当時最も華やかな雰囲気を振り撒いていた(今は違いますけど)外資系金融機関にお勤めの美人エリートレディでありまして、何でこんなむさくるしい病院のもっさりしたおっさん医者(私のことです!)に来るんだろうって思わず考えてしまうようなキラキラした女性でした。彼女もなかなか風邪が治らずいつまでも咳き込んでいまして結核やら百日咳やら、果ては癌からエイズまでチェックしたけど全部セーフ。どうもよくわからないので詳しく生活パターンを聞いてみるとどうも彼女、おしゃれ優先で薄着をしているらしい。厚着を勧めても“寒くないから”一点張りで聞き入れません。乙女心はすさまじきものとあきれるやら感心するやらしたんですけど、このままじゃあ来年の春まで咳が続く可能性があると思って一計を案じました。何回目かの外来で私はSさんに重々しいトーンで言ったんです。“薄着すると早く老けますよ。体温維持のため、厚着の場合に比べて大量の熱を作らねばならないので代謝レベルが上がり、結果的に早くガタが来るんです。いつもエンジンをぶん回して走っていたら車だって速く壊れるでしょ。”
さて彼女は次の投薬日に来ませんでした。怒ったかなって思ったんですけど真相はわからずじまい。で、その結末がわかったのは次の年のクリスマスキャロルが町に流れる頃でした。風邪を引いたSさんがオーバーを着込んで現れたんです。昨年の結末を聞いてみると乙女心を逆手に取ったこのオペレーション(作戦)はドンピシャリだったようで彼女の風邪は3日後には治ったそうな。そして次の年の風邪は1回の診察と治療で終わりました。めでたしめでたし。
若い女性が美しいボディラインを強調するようなおしゃれをしたい気持ちはそれなりに理解できますが風邪の時には少し汗ばむレベルまで厚着をすることが必要です。それから過剰な薄着と肌の露出過剰は皮膚の老化を促進します。
一応、参考までに。