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むかしむかしのお話です。高血圧で私の外来に通っていたCさんは激動の昭和を生き抜いてきたお婆さんです。本人によれば”火垂るの墓”の話はあまりにも身近な出来事のように感じて、つらくとても見ていられなかったと言います。(”火垂るの墓”に興味がある人はネットで調べてください)。Cさんは終戦後に大変苦労されたそうですが、その頃は子供たちやお孫さんに見守られて静かな余生を過ごしていました。Cさんの高血圧は比較的軽症であり薬で充分にコントロールできました。それ以外には糖尿病などの危険因子も無く症状は安定していたんですけど、その年の夏はCさんにとって暑さがこたえる年だったようで何度か点滴による水分補給が必要でした。何とかその時期を乗り切った9月の半ば頃、ようやく朝夕が少し涼しくなってきて、それまでのように朝夕に散歩をしようかなと少し近所を歩き始めたらなぜかめまいが止まらない。フラフラしてきて吐き気がする、冷や汗も出てくる、そんな具合でひどく不安になってきました。家族にそのことを言うと心配した息子さん、言わなきゃいいこと言っちゃった。”脳の血管が詰まりかけてるかも・・・”
その一言でパニックになったCさん、家族に支えられてよろよろと倒れそうになりながら私の外来にやって来たのはその年の彼岸の頃でした。毎月の定期的な診察日だったんですけど先月は暑さにまいってはいても、ここまで”ヨロヨロ”じゃなかったんで驚きました。で、診察してみると脳の障害の気配は無くて結果は足腰の筋力が低下していただけ。結局夏バテのためにしばらく動かなかったので足が弱って筋肉のバランスが崩れめまいが起こり、そのおまけで吐き気と冷や汗が出ていたんです(車酔いのときと同じです)。診察結果を説明して脳血管が詰まりかけているわけではなくて歩けば治ってくるって説明したらCさん、パッと顔色が明るくなって診察室から出るときは1人で歩いてました。で、家族さんの話ではリハビリと称して次の日には近所を歩き回っていたそうです。あまりの変化に家族も私も驚いたんですけど心理的なストレスの体への悪影響のすさまじいこと、改めて認識させられた次第。で、めでたしめでたしで今日のお話はこれでおしまい。
高齢の方のめまいについて
比較的高齢の方がめまいを訴えると、誰もが脳の病気を最初に考えるようですが実際には頚部の筋肉と骨のバランスの崩れ(言い換えれば肩凝り)か単なる足の筋力低下が多いです。めまいは車酔いと同じように吐き気や冷や汗を”おまけ”として引っ張ってきますが、めまいが治れば消えてしまいます。