良秀会ブログ
メイン画像

平成21年3月の物語

 むかしむかし、かなりむかしのお話です。時々眼が回って、その時だけ私の外来に現れるWさんが、やっぱり眼が回るといってダンナさんに支えられてやって来たのはまだ肌寒い日が多い、ある年の3月の中ごろでした。いつも心配のクネ(ネタと言うべきか?)は決まっていて”頭の血管、詰まりかけている
んちゃいますか?”。けれど毎回、結論は同じでこっちのセリフも同じでして“ちゃいます、足と腰と頚の筋肉が弱っているんです。 トシですワ。”
 Wさんと話しているとなぜかこっちまで漫才やってるみたいなノリになってしまいまして話し言葉が関西弁見出しになってしまいます。
 さてその時のWさんの“眼が回る”もほぼ同じパターンだったんですが、それとは別に脳の動脈硬化も進展している気配がありまして、以前よりも血圧が上がっていて腎機能も低下気味でした。それでWさんに言いました。“トシのせいだけじゃなさそうです。血圧を下げて動脈硬化と腎機能低下の進展を防ぎましょう。”
 言っているうちにアレッて思いました。なぜかいつもの関西弁が出てこない!で、思ったこと、私も関西出身だけど、この言葉はリラックスしていないと出てこない言葉らしい。と、いうわけで、それからのWさんの診察では、それまでの関西弁見出しの気楽な会話は出番が少なくなってしまったんですけどWさんの病状は何とか落ち着かせることが出来ました。メデタシメデタシ・・とは、行かなかったんですね。やっぱり年齢を重ねていくと筋力の衰えは進行しますし脳の変化も進んでいきます。Wさん、認知症がひどくなってきましてダンナさんの負担も大変になってきました。それでも公的な援助を受けながら頑張っていました。
 で、ある日の大事件!その女房孝行のダンナさん、突然ある女性から愛を告白されてしまいました。あなたが好きです、あなたのそばにずっと居たいですって。一体誰から?話を関いた全員が一瞬ため息をつき、その後複雑な気持ちになったとか。実は私も同じでした。愛を告白したのはダンナさんを忘れてし
まったWさんでした。
 その後のお話はながーくなるんですが、最初は自分を忘れてしまったWさんに激しい腹立ちを感じたダンナさんですが、それは病気が悪いんであってWさん白身には責任はないと考えることにしたそうです。そして自分を20歳代の乙女と考えている認知症のWさんを改めて受け入れてあげようと決心したとか。
その1年後、Wさんは老衰で亡くなりました。その2ヵ月後、ダンナさんも、やるべきことはやったと言い残して亡くなりました。そして私は男女の愛情の結晶を見たような気分になりました・・・合掌。
 今回をもって今昔物語はしばらく休止します。 SEE YOU AGAIN!